室町時代半ばの永享十年。
結城合戦の落ち武者 里見義実は、安房で国を領するようになった。
このときに首を刎ねた先の領主の後妻、玉梓(たまづさ)の霊が、里見家を呪う。
義実の娘の伏姫は、犬の八房の気を宿し、仁義礼智忠信孝悌と文字の入った八つの玉を放ってこの世を去った。里見家の重臣で、伏姫の許嫁であった金碗大輔(かなまりだいすけ)は、ちゅ大法師となって玉の行方を探す旅に出た。
大塚村の犬塚信乃は孝の玉、額蔵こと犬川荘助は義、犬田小文吾は悌、犬飼現八の信、犬山道節の忠、犬江新兵衛の仁、それぞれに相応しい字の玉を持って生まれた。
本郷追分で荘助と道節は出会い、立ち会った時に玉を取り違える。
信乃と現八は古河の芳流閣で捕り物劇を見せた後、ともに小舟に落ちこみ行徳に流れ着き、相撲取り小文吾と出会った。
小文吾の妹ぬいと、その夫の房八は死んだが、幼子新兵衛は蘇生した。(ぬい→いぬ、房八→八房 という 暗示もあった)。
この行徳では、ちゅ大法師も合流した。
ちゅ大法師は伏姫の没後二二年の時を経て、ようやく信乃、小文吾、現八、新兵衛、四名の犬士と巡り会い、また信乃よりは、五人目の犬川荘助の存在も知らされたのだった。